心に残る山行 Index
■登山者も希なGWの大縦走
 赤石岳〜荒川三山


◆コース: 椹島〜赤石岳〜荒川三山〜椹島
◆期間: 2006年5月2日(火)〜5月6日(土)
◆同行者: なし



●5月2日(火) 雨後晴れ


 こだまで静岡へ向かう。途中で雨が降ったが静岡は曇り。畑薙第一ダムへのバスは途中2回の休憩を入れ、所要時間はたっぷり3時間以上。やはり途中で本降りの雨になったが、ダムに着く頃には上がった。東海フォレストの送迎は、僕一人だけだった。運転手の話では、今年は非常に雪が多いという。
 椹島で水を汲んでから出発。歩き始めはツツジの花が綺麗だ。体調はまずまず、順調に標高を稼ぐ。2000m付近で雪が出てきたと思ったら一気に深くなったのには驚いた。時々落ち込んでしまうので、ワカンを着けたところ効果は絶大。スタスタと歩くことができる。迷いつつ装備に加えたが、結果的に大正解だった。しばらく登ると氷化した急な所が出てきたためアイゼンに替え、少し登った所で日が暮れたので行動を終わる。最高の天場である。

[記録] 椹島(12:50発)〜2470m地点(18:40着)



●5月3日(水) 晴れ、夕方霧


 昨夜が遅かったので、ゆっくり5時頃に起きる。ちょうど日の出の時刻。素晴らしい五月晴れだ。
 1ピッチで赤石小屋手前の展望の良いピークに出る。登山道はここを通らないので雪の多い季節だけの眺めだろう。赤石小屋はまだかなり雪に埋もれていた。富士見平へはほとんど尾根通しに登る。富士見平から見るラクダの背はべったりと雪が付き、かなり難しそうだ。最初のコブは問題なく越えたが、二つ目は下りが悪く大変だった。先行者のトレールがわずかに残っており、助けられた。ヨレヨレでコルに下り着く。ここからは長く急な雪稜となる。1ピッチ登った小平地で腹ごしらえ。いよいよ最後の急登となる。この時間になると雪が腐り始め、崩れやすい足場に緊張を強いられる。岩場は雪混じりで、しかも重荷なので微妙なバランスを必要とし、なんとか登れるとはいえとてもここを下る気にはなれない。岩場を越えて不安定な雪稜は続き、小赤石岳に着いた時には心身共に疲れ果てた。稜線にテントを張る予定だったが、とても今から張る気も起こらず、赤石岳避難小屋に泊まる事にして、赤石岳まで最後の力を振り絞る。
 赤石岳避難小屋に泊まるのは3回目だが、いつも綺麗で有難い。温かい飲み物で一息ついてから、聖岳の撮影のために小屋を出る。撮影ポイントに着く頃には雲が湧き始め、数カット写したところで完全にガスに包まれてしまった。しばらく粘ったが状況は変わらず、一旦小屋に引き揚げる。夕食を食べ終えてふと外を見ると、みるみるガスが切れて日没後の西の空が見え始めた。カメラを持って外に飛び出し、暗くなるまで雲の動きを追い続けた。

[記録]2470m地点(6:40発)〜赤石小屋(7:45)〜富士見平(8:10)〜小赤石岳(12:40)〜赤石岳(13:50着)


●5月4日(木) 晴れ、夕方霧

 3時半起床。大急ぎで朝食とパッキングを済ませて出発。小赤石岳周辺で朝の山を撮りまくる。
 ダマシノ平への下りはアイスバーンと化した広大な急斜面で、スリップは絶対に許されない。二点支持でアイゼンを意識して利かせながら、延々と、慎重に下ってゆく。ダマシノ平でほっと一息。休んでいると3羽の雷鳥が近くで求愛合戦をしており、フィルム数本分撮影してしまった。大聖寺平へ下った後、稜線のルートを前岳手前のコルまで1ピッチ。ここで、稜線通しの冬季ルートをじっくり観察する。首から提げていたカメラをザックに入れて登り始める。急な雪の斜面と岩場が交互に現れる。失敗が許されない状況が続いたが、ルートファインディングがうまくいき、順調に2ピッチで前岳を登りきった。頂上では嬉しくて叫んでしまった。中岳で休んでいると、反対方向から単独行者がやって来た。話を聞いてみると、あちらも入山以来初めて人に会ったとのこと。できれば茶臼まで行きたいと言っていた。
 腹ごしらえをしてから悪沢岳へ向かう。コルまでの下りは部分的にナイフリッジとなっており、腐った雪で足元は不安定極まりない。コルから、今日最後の登り。またも急な雪と岩場に緊張が続いた。途中でまた一人すれ違った。悪沢岳の頂上は、大岩が全て雪に埋まり、最高の天場となっていた。
 時間をかけて念入りに整地し、快適なテントを張る。テントの中からは、正面に赤石岳が見える。たっぷりお茶を飲んでから、陰影が出てきた赤石岳を撮影。16時の気象通報で天気図を書きながら夕食の準備。気圧配置は、日本が巨大な高気圧に覆われており、明日も晴天間違いなし。夕食を食べている間にガスってしまったが、日没前に再び晴れた。テントから飛び出し、今日も写真を撮りまくった。暗くなってから、月光の赤石岳も撮影する。

[記録]赤石岳(4:45発)〜ダマシノ平(6:10)〜荒川小屋付近(8:05)〜中岳(10:30)〜悪沢岳(12:55着)



●5月5日(金) 晴れ

 今の季節は日が長いため、どうしても寝不足になってしまう。今日は幕営地=撮影ポイントなので、アラームで起きてからコーヒーだけ飲んで、テントの前で撮影開始。日の出は4時45分頃。赤石岳はまあまあだったが、北部の山々は霞が強くて撮る気にならない。
 朝食後テントの中でパッキングをしていると、足音がした。千枚岳から来たという3人組。これから三伏峠へ抜けるということだった。
 テントを撤収して出発。夏は大岩の間を行く所が全て雪で埋まり、夏よりもずっと歩きやすい。丸山で単独行者とすれ違う。赤石岳へ行くというが、どれが赤石岳からも分からない様子で見るからに頼りない。大丈夫だろうか。丸山からの下りでさらに2人の登山者とすれ違い、今日6人目である。千枚岳手前の岩稜を慎重に越えて、ついに千枚岳に到着。全ての悪場が終わり、感無量である。予定よりも1日早く、今日椹島へ下ることにする。千枚小屋まではトレースを辿ってあっという間。千枚小屋からの下山ルートが見つからず、最初は自分の判断で適当に下るが、やがてトレースを発見することが出来た。樹林帯の下りではやはりワカンが威力を発揮。全く潜ることなくのんびり気分で下ってゆく。清水平の手前で雪が消えた。このコースは急な下りが無いのは良いが、とにかく長い。疲れない様にゆっくり歩くが、小石下に着く頃にはかなり疲労を感じた。ここから先は、ミツバツツジと芽吹きに春を味わう。漸く大井川まで下り着いた。滝見橋の手前で山側から水が滴り落ちている所にコイワザクラの群落があり、三脚を出して撮影する。あとは林道を5分ほどで椹島に到着。
 まずビール。厳しい山行をやり遂げた満足感で最高の気分である。素泊りの受付をして小屋に入る。一人だけの貸切状態なので、濡れ物を全て広げて乾かす。そして風呂に入ってさっぱりした所で、またビールを飲みながら夕食の支度。なんとも贅沢な夜となった。

[記録]悪沢岳(7:45発)〜千枚岳(8:50)〜千枚小屋(9:30)〜小石下(14:00)〜椹島(16:00着)



●5月6日(土) 晴れ


 たっぷり寝ることができた。下山の送迎バスは10時なので、朝食とパッキングを済ませてから牛首峠までカメラを持って散歩に向かう。今日も良い天気で、芽吹きの中を流れる赤石沢の上に、赤石岳がすっきりと望まれた。
 送迎バスで畑薙第一ダムまで出ても、静岡行きのバスまでは2時間もある。ウグイスの美しい声を聞きながらラーメンを作り、ダムの堰堤を反対側まで散歩。満開の桜の向こうに、茶臼岳がの稜線が白く輝いていた。

赤石小屋付近からの赤石岳


ラクダの背のナイフリッジ


瞬光の聖岳


朝日に染まる


モルゲンロートの赤石岳


ダマシノ平にて


春陽に輝く荒川三山


悪沢岳山頂ホテルの窓から


夕雲なびく中岳


朝の赤石岳


牛首峠からの赤石岳
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