心に残る山行 Index
■延々と続くナメ滝が夏の陽に輝く
 大雪山・クワウンナイ川



◆コース: 天人峡〜クワウンナイ川溯行〜北沼〜化雲岳〜天人峡
◆期間: 2005年8月15日(月)〜8月19日(金)
◆同行者: Tさん、Mちゃん


●8月15日(月) 東北道:雨 青森:晴れ

 5時にTさんの車が迎えに来てくれる。今回は北アルプス双六谷の計画だったが、中部から北陸にかけてずっと大雨が続いているため、計画変更を協議。30分ほどあーでもないこーでもないと言い合っていたが、Tさんの「とにかく北へ」の提案で、とりあえず東北道へと向かう。佐野SAで朝食をとり、改めて目的地を協議。Tさんの「北海道」という提案には「まさか」と思ったが、「クワウンナイ」という言葉にグラグラッときてしまった。決定である。
 そうと決まれば、青森目指して雨の東北道をひた走り、15時25分発のフェリーに飛び乗ることができた。18時25分に函館に上陸。まずは2.5万図を入手すべく、本屋を探しまくる。なかなか見つからず、かなり焦ったが、電話帳で調べた文教堂で買うことができた。地図無しでの沢登りなど考えられないので、今回の山行で最大のピンチだったといえる。夕食に地元のイカを食べてから、旭川を目指す。国縫ICで道央道に入り、誰も居ない静狩PAでテントを張って寝る。本州では考えられないほど静かで快適な一夜だった。


●8月16日(火) 苫小牧付近:雨 現地:晴れ

 5時起床。再び、旭川目指してひた走る。砂川SAで朝食。旭川鷹栖で高速を出て天人峡へ。北海道に上陸してから登山口までが本当に長かった。北海道の広さを痛感した。
 入渓地点近くの駐車場で身支度を整え、いざ出発。古い林道を少し歩き、ポンクワウンナイ川出合で沢へ下りる。透明な水が蕩々と流れる、好ましい雰囲気の沢歩きだ。地図を片手に、現在地を確認しながら進む。今日は出発時間が遅かったので、できるだけ先に進んでおきたい気持ちがあったが、せっかくの場所で釣りと焚き火をゆっくりと楽しみたかったので、早めに幕営地を決める。
 テントを設営してから、釣り糸を垂れる。大物は釣れなかったが、まずまずの釣果。日が暮れ、焚き火を囲んでいると、沢の流れに月光が降り注ぎ始めた。素敵な一夜となった。

[記録]林道入口(11:20発)〜ポンクワウンナイ川出合(11:40着 12:00発)〜700mBP(15:30着)


●8月17日(水) 晴れ

 5時半起床。今日も清々しい天気だ。美しい流れの中を、写真を撮り合いながら進む。途中のプールでは、あまりの美しさに思わず泳いでしまった。Mちゃんも潜って洗髪している。化雲沢出合で左岸を高巻いたが下る所が崩れていたため、ロープを出して下る。対岸に幕営地が見えたので、ここは右岸を行くのが正解だったようだ。ここで昼食。その先も、悠然と泳ぐオショロコマに餌をやって遊んだり、写真を撮ったりしながらたっぷり遊んだため、思いのほか時間がかかってしまう。魚留ノ滝下で、ヘリが飛来し、怪我人を収容するのに遭遇した。やがて魚留ノ滝。川幅一杯に流れ落ちる優美な姿に、夢中でシャッターを押す。気が付くと15時過ぎ。この際暫く幕営地が無いので、ここを2日目の泊まり場に決める。左岸の快適な平坦地にテントを張り、今日も釣りを楽しむ。隣のテントの北大生と一緒に焚き火を囲んだ。

[記録]BP(7:45発)〜カウン沢出合(12:50着 13:20発)〜魚留ノ滝BP(14:50着)


●8月18日(木) 晴れ後霧、稜線は高曇り

 今日はいよいよクワウンナイ川の核心部である。魚留ノ滝を左岸から巻くと、その光景に思わず歓声が上がった。美しいナメが続いており、その奥にはさらに滝が見えている。ここからはもう、行けども行けども、次から次へとナメと滝が現れ、難しくはないが、スリップすればかなりの距離を滑落するので、慎重に足を運ぶ。足元から飛び散る飛沫がキラキラと輝く。両岸の森の緑が美しい。流れの脇には高山植物の花が揺れている。何度も立ち止まってシャッターを押す。
 1290m地点で漸くナメが終わり、再び普通の沢の風景となった。ここで昼食。少し進むと、迫力ある「オーバーハングの滝」。ここは左から巻くが、5mほどの垂壁を登る部分があり、ロープを出して荷物を吊り上げた。1360mの二俣は、左右に立派な滝がかかっていた。ここは間の尾根を登る。快適な巻き道だが、このルートを発見した先人に感謝しながら登った。滝の上に出ると、急に源流らしい雰囲気になってきた。すっかり水量が減った流れの中を、どんどん標高を上げてゆく。1620m地点で一旦伏流となった。ここから先はお花畑につけられた踏み跡を辿る。水源は豊かな雪渓だった。霧の中にナキウサギの声が響く大岩が積み重なった所を登り、ハイマツとお花畑の中の踏み跡を進むと、ついに縦走路に出た。
 ここで靴を履き替えてトムラウシ山へ向かう。霧が晴れ、高曇りながら東大雪から大雪山までの雄大な眺めを見ることができた。盆休み過ぎの縦走路は、ほとんど登山者に出会わない。3人ともヨレヨレで南沼まで届かず、北沼の畔を今日の幕営地とした。夜になって空は晴れ上がり、月光が美しかった。

[記録]魚留ノ滝BP(7:00発)〜奥二股(8:50着 9:20発)〜オーバーハングの滝(10:50着11:10発)〜1580m地点(12:50着 13:10発)〜登山道に出る(15:30着 15:50発)〜北沼BP(17:15着)


●8月19日(金) 雨

 4時前に起床。生憎の霧にトムラウシ山往復を諦め、下山することにする。出発の用意をしていると、時々パラパラと雨が落ちてくる。
 霧の縦走路を、一面のチングルマの花穂を見ながら黙々と歩く。ヒサゴ沼から本降りの雨となった。化雲岳からの下りは実に長かった。途中の第一公園の湿原は、ギボウシを主に沢山の花が残っており、それらが霧に霞む幻想的な光景に疲れを忘れた。やがて樹林帯に入り、滝見台では遠くに雄大な羽衣ノ滝を見る。ここからは良く整備された遊歩道を一気に下り、ヨレヨレで天人峡に下山した。
 温泉で汗を流して外に出ると、なんと晴れ上がっていた。うまい具合に、電話で苫小牧発23時45分の大洗行きフェリーの2等寝台を予約することができた。旭川から道央道に入るが、再び雨となった。苫小牧で乗船手続をしてから、タクシーで街の居酒屋へ行く。美味しい海の幸で満腹になってから「さふらわあ」に乗り込んだ。

[記録]北沼BP(6:10発)〜日本庭園(7:15着 7:30発)〜ヒサゴ沼分岐(8:25着 8:35発)〜1665m地点(11:00着 11:10発)〜1400m地点(12:10着 12:15発)〜1170m地点(12:50着 13:10発)〜滝見台(14:05着 14:15発)〜天人峡(14:50着)

入渓地点の穏やかな流れ


徒渉を繰り返して進む


沢の恵み


月下の露営


魚留ノ滝


魚留ノ滝の上から核心部のナメが始まる


エゾキンバイ


延々と続くナメを行く


リュウキンカ咲く源流を行く


水源の雪田の傍らにエゾコザクラが咲く


暮色のトムラウシ山


月光に光る北沼


チングルマの果穂が霧に濡れる
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