サッカーコーチングフォーラム内容抜粋

2000年1月23日および30日に行われた、横浜緑区サッカ−連盟主催の「サッカー指導者のためのコーチングフォーラム」講演内容抜粋です。


「サッカー指導の実際」横浜FCゼネラルマネージャー 奥寺康彦氏
<日本人初の世界で活躍したプロサッカープレーヤー>

・ 子供育てる気持ちでコーチングすることが大切。
・ ドリブル時は、常に敵がいることを意識させること。
− ボールを受ける時は半身になって斜めに構えさせると、まわりがよく見える。
− 常に敵をブロックすることを意識させる。
・ 練習するときの目的意識をはっきりさせ、子供に考えさせること。
・ 子供の意図したプレーに理解を示し、頭から否定しない。
・ ボールをしっかり蹴れるようにするべき。
・ 小学校も高学年になったらまわりの人を使う事の意識が大事。
・ ディフェンスの基本は1対1。強くなるためには、この強化が必要。
・ 試合のときは、指導者は教えたことがいかにできているかをチェックする。
・ 試合は、子供自身に勝つことを意識させる。
・ 子供はほめることにより意識が向上する。
・ 子供が上達するのは、自分でやる気になったとき。
・ 小さなグランドで小人数の試合をやらせると、ボールタッチが多くなり良い練習になる。
・ うまい子供にこそ、色々な要求を出し色々なことをやらせ、できない子供には出来る範囲のことをゆっくりやらせれば良い。
・ 試合の中でミスをしてもそのあといかに早く修正するかが大事かを教えること。
・ 簡単なバツゲームを取り入れることも、競争意識を高めるのに良い方法。
・ 練習では、たまたまうまくいったでは駄目。試合ではOK。
・ 良いプレーを見学することも、良いサッカー練習になる。
・ 女子も男子と同等に平等な扱いで良い。
・ 水は、自由に取らせる。特に夏場は、重要。
・ 前にスペースがあるならドリブルをしながら回りの状況を判断させるようにする。
・ 出来ない子供には、ゆっくりやっても良いと言ってあげる。出来る子供と出来ない子供を分けて指導しないほうが良い。
・ 低学年の時は、ボールに集まってしまっても試合に参加する意識えあれば良い。
・ 挨拶についてはきちっとやらせるべき。
・ 小学生には敵対動作の中での手の使い方などの反則動作は教えない。



「若年層のスポーツ障害と救急処置」横浜FCトレーナー 佐藤千可生氏
<横浜FC及び桐蔭学園サッカー部トレーナー>

・ ケガをしてしまったら、まずアイシングをして、1〜2分後にどこが痛いのかを聞き、ケガの場所と色を確認する。ケガをしていない方の同じ場所と見比べると状態が判りやすい。
・ 関節の内出血の時は、靭帯の可能性が高い。
・ 目の上をケガをして出血してしまった場合には、コメカミを押さえて止血する。
・ 子供には、ケガ予防のためのテーピングはあまり使わないほうが良い。
・ 子供は汗をかきにくく体温のみ上昇してしまうので、水分補給はこまめにやらせる。
・ 「熱疲労」時は、顔が赤くなるので、頭を低くしてすずしくしてあげる。
・ 「熱射病」時は、体温が高くなり顔色が真っ赤になるので、首の後ろ、わきの下、股、を冷やしてあげる。
・ 冬場は、体を温めてから薄着になるようにしたほうが良い。
・ 靴は、アップシューズの方が負担か少ない。ヨーロッパでは、小学生はスパイクを使っていない。
・ 靴の大きさは、靴をはいた時、足の指が多少動く程度が良い。小さすぎるのは良くない。
・ 鼻血が出た時は、首を冷やして詰め物をして下を向かせる。上を向かせるのは対処としては間違い。



「サッカーが強くなる食事へのアプローチ」明治製菓 浦上千晶氏
<フランスワールドカップをはじめ、数多く日本代表チームに帯同した栄養アドバイザー>

・ スポーツでエネルギー不足になると、体はバテ、頭は集中力がなくなる。
・ 筋肉は、スポーツをやればやるほど壊されていく。タンパク質の補充が必須。練習後にタンパク質をとる(牛乳などを飲む)は、壊されている筋肉の補給になる。
・ 発刊では、カルシウムや鉄分が失われていくので、体調不良の原因になる。補給が重要。
・ 野菜嫌いは、ミネラルや鉄分が不足し、コンビ二のジュースなどを多く取るとタンパク質不足になり、朝食をしっかり取らないと栄養不足になりやすい。
・ 食事もトレーニングの1つであり、「練習」「栄養補給」「休養」のバランスが大事。
・ しっかりとした食事が良いスポーツ選手になるためには重要であり、母親が食事面のコーチとなることが必要。
・ 栄養素
− エネルギ−補充:糖質、脂質
− 筋力アップ:タンパク、ミネラル
− コンディション保持:ミネラル、ビタミン
・ タンパク質の不足は、筋力低下や貧血の原因となる。サッカーをやっている子供のタンパク質の必要量は、2.5倍の体重を持つ成人と同じ。
・ 貧血はタンパク質と鉄分不足が原因。タンパク質は1度に多量に取っても駄目で、毎食時に分けて取るのが良い。
・ バラ肉は、ほとんど脂肪でタンパク質の補充にはならない。
・ 糖質が十分とれていないと体のなかの脂肪が消費されず、試合などでは後半バテル、集中力がなくなる、判断力がなくなるなどの症状が現れる。
・ ビタミンB1(豚肉、胚芽米、ごま、豆腐)は、糖が燃えるための火付け役。ビタミンB1不足は、疲れが抜けにくくなる。アイスやジュースは、10%が糖分であり、取りすぎるとビタミンB1の無駄な消費につながる。
・ タンパク質、糖質、ビタミン、ミネラルなどを無理なく摂取するためには、「栄養フルコース」型の食事が良い。これは、通常の食事に果物と牛乳を付け加えるだけでも良い。
・ 試合前の食事
− 消化・吸収の時間から見て3〜4時間前までに食事を終えておく。この時の食事は、おにぎり、うどん、スパゲッティ、バナナなどの糖質類が良い。
− 試合の直前におなかいっぱい食べるのは、逆効果。
− ゲームとゲームの間に食べる食べ物としては、消化吸収の良いバナナなどの果物が良い。
− ハーフタイムの補給としては、糖質を補給し血糖値を下げない用にすることが大切で、スポーツドリンクを2倍に薄めた飲み物などが良い。
・ 市販のスポーツドリンクは、糖分が多すぎ水分補給がスムーズでなくなる。
・ 疲労回復には
− 朝食抜きや欠食をしないことが大切。筋肉は24時間以上かけて作られていくので、その材料が体に入ってこないと筋肉が作れなく、疲労も取れにくい。
− 練習後には、すばやく糖質(スポーツドリンク、オレンジ100%ジュース、バナナ、おにぎりなど)を補給しておく。
− 体の中にビタミンC(野菜、果物)がある状態を保つことか疲労回復に効果的。ビタミンCは水溶性のため体の中に長くとどまる事ができないため、毎食取るようにすることが必要。またビタミンCが不足すると体調をくずす。



「運動生理とコーチング基礎」東海大学 田中誠一教授
<運動生理学とトレーニング学の日本における第一人者>

・ 体力とは
− 精神(判断、計算、推理)・情緒(不安、緊張、喜び)
− 健康度
− 運動の作業能力
のことを言う。運動の作業能力のことを体力と思い込んでいる人が多い。体力を要素別に分けて考えることにより、何をどんな目的のためにやるべきかが明確になる。
・ 技能には
− 体力
− 巧みさ(Skill)
− 作戦力(戦略の展開力)
があり、「体力」の表現が「巧みさ」であり、「体力」と「巧みさ」の組み合わせが「作戦力」となる。
・ トレーニングは、万能ではなく発育を助けるためのものである。
・ 素質は、その人その人が生まれもってくるものであり、いかにトレーニングしても元の素質か変わらない。すべてのスポーツは、素質がなければ一流選手にはなれない。指導者は、このことを認識して取り組むべきである。
・ 骨格筋(筋肉)の性質は、その人その人が生まれもってくるものであり、生まれてから死ぬまで変わらない。
− 赤筋(遅筋):持久力を必要とする有酸素運動
− 白筋(速筋):瞬発力を必要とする無酸素運動
普通、赤筋と白筋はバランスよく備わっているが、どちらかに極端に偏ると運動の大選手になる可能性が大きい。赤筋と白筋の動作がはっきりしてくるのは、小学校6年生くらいから。
・ スポーツのコーチは、人材開発の素質を見抜くこと。白筋優勢の人にはマラソンなどは向かず、赤筋優勢の人は、短距離走や幅跳びなどは向かない。
・ 柔軟性とバランス感覚は、幼少期に極限まで何をしたかを脳が記憶していて、この経験の有無が柔軟性やバランス感覚として現れている。柔軟性やバランス感覚の悪い人は、脳のこの活動が休止しているだけであり、この神経を目覚めさせればこの能力は高くなる。


以上


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